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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

暦日

一

翌日、幹太郎は神田お玉ヶ池の千葉道場へゆき、周作に面会を求めた。

名を通じると、千葉定吉という人(周作の弟だという)が出て、接待へ招じ、用件を聞いた。

そして、周作は夕方でないと帰らないから、改めて来るように、用件は伝えておくと答えた。

彼は夕方に出直した。

周作は帰っていた。名声の高いにもかかわらず、すべてが簡明率直で、威を張るようなふうはどこにもなく、周作その人も――その厳しく重厚な風貌はべつとして、幹太郎の希望をこころよく聞き、

「腕はみなくともわかっている」

と、云って入門を許した。

幹太郎はその翌日、道場へ移った。

暦日

一

四年経った。

幹太郎は二十七歳になり、名も深喜(註、彼の名は一般に『造酒』として知られているが、高倉テル氏の考証によると『深喜』が正しいそうで、作者もそれに従った)と改めた。

――平手深喜。

千葉道場での彼の立場は、やや別格であった。

夜明け前、周作に稽古をつけてもらうと、あとは午前と午後の二回、中級の門人に稽古をつける。そのほかには、なんの役も付かなかった。

千葉周作は、そのとき四十五歳。岐蘇太郎、栄次郎という二人の男子があって、次男の栄次郎は異才といわれる腕をもっていた。