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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

二

「どうだかな」

「ほかにあるものか」

平八は微笑して云った。

「順位の更改にきまっている。あがるぞ」

「どうだかな」と、幹太郎は顔をひき緊めた。

「二席とはいえないかもしれないが、三席にあがることは確実だ。これまで六枚めにいたのが、おかしいくらいだったからな。おれはまず三席はまちがいないと思う」

「有難いが、低い声でたのむ」と、幹太郎は赤くなり、「取らぬなんとかの皮算用はよそう」と云った。平八は頷いて、盃を口へもってゆきながら云った。

「明日は国へ知らせてやれるぞ」

「うん――」と、幹太郎は呟くように云った、「もしそうなったら、父はよろこんでくれるだろう」

彼はふと遠くを見るような眼をした。

二

幹太郎は故郷をおもい、父をおもった。

父の弥七郎も剣士をこころざし、ずいぶん修行したようである。父の口からはなにも聞かないが、母親の話によると、若いころから幾たびも修行に出て、二年も三年も帰らないことがあった。そのため、田地や山林も売り、いまでは一町歩たらずの田畑と、同じくらいの山林が残っているだけである。

――いま残っている分をなくすことはできない。

と、母親はよく幹太郎に云った。