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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
三
十左が「よせ」と叫び、孝之助が、「大丈夫です」と云った。
幹太郎はそのまま廊下を道場へゆき、「みんな場所をあけろ」と喚いた。門人たちはさかんに飲みながら、話したり笑ったりしていたので、幹太郎の声がわからなかった。
「おい、場所をあけろ」
彼は道場のまん中に立って絶叫した。
「膳を片づけろ、もうひと勝負するんだ」
道場の中が急にしんとなり、みんなが幹太郎のほうへ振向いた。
「平手、どうしたんだ」と、秋田平八が呼びかけた。
三
幹太郎は自分の竹刀を取って戻った。
「どうしたんだ、平手」
平八が不自由な片足をひきながら、彼のほうへとんで来た。幹太郎は竹刀をぴゅっぴゅっと振りながら、平八を見て顔を歪めた。
「おれは放逐だ」
「なんだって」
「おれはこの道場から放逐されたんだ」
「平手、――」
秋田平八は口をあいた。
そこへ納屋孝之助と、淵辺十左衛門が出て来た。幹太郎は竹刀で二人をさし、平八に向って云った。
「置き土産におれがどれだけ遣うかみせてやる」
「待て平手、それはいかん」
「止めるな」
幹太郎は向き直った。
「試合はならん」と、十左が叫んだ。
「納屋、試合はならん、わしが許さんぞ」