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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
五
「その相談で来たんだが」と、平八は静かに云った、「じつはお母さんにも出て来て頂くことになったんだ」
「田舎の土地やなにかをどうする、あれは借財のかたになっているかもしれないが、平手家にとって父祖伝来のものだぜ」
「それは、――おれの口からは云えない」と、平八は眼を伏せた。
五
深喜は、平八を(上から)睨みつけた。
――自分の口からは云えない。
その一と言が事情を説明している。要するに土地も屋敷も手放したのであろう。ことによると、それらを売って、小間物店を開業する資金にしたかもしれない。
――こいつ。
と、深喜は拳をにぎった。
もちろん、そんなことは口には出さなかったし、すぐにその想像もうち消した。平八がそんな卑しいこと、――少なくとも自分の利益のために、そんなことをする人間でないことは、深喜がよく知っていたからである。
「いいよ、およそ見当はつく」と、深喜は云った。
「母が出府するとすれば、いつごろなんだ」
「十月初旬には、来られるだろうと思う」
「みんな黒門町に住むのか」
「そういうことになる」と、平八は云った。
「狭くて御不自由だろうが、平手が独立するまでのことだし、他人がはいるわけではないですからね」