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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

四

大弐は刑死し、大塩もまた同様に死んだ。両者とも、その所論は『天子に政権を還せ』というにある。さもなければ道義の紊乱も政治の頽廃も防ぐことはできない、と主張しているのだ。

「おれたちは、これを傍観していてはならない、おれたちもなにごとかを為さなければならない、みんなそう思わないか」と帆平は、みんなの顔を順に見まわした。

「私は、そうは思いません」と、深喜が云った。

みんなが一斉に深喜を見た。帆平は「よし」といい膝へ両手を突いて云った。

「よし、平手の意見を聞こう」

「人には、それぞれの生きかたがあります」と、深喜は云った、「私は、大弐の説を知りませんが大塩という人の気持はわかります。けれども、政治や道義の頽廃を、暴挙によって改革しようとすることには反対です」

「反対する理由はなんだ」

「破壊や殺戮によって事を行うことが、承服できないのです」

「ほかに手段のないときでもか」

「いかなる場合にもです」

「平手は臆病者だ」と、帆平は声をあげていった。

四

深喜は口をつぐんだ。

「平手は臆病者だ」と、帆平は繰り返した。

「それは海保さんがそう云うだけのことですよ」と、深喜は静かに答えた、「大塩という人が騒擾を起こしたのは、その人自身そうせずにいられなかったからで、私が暴動や破壊を嫌うのは私の生きかたです、それをもし、臆病者だと云うのなら