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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
四
そうでなくってよ、と幸坊は小さな肩をそびやかした。
幹太郎は突然、はっとしたようにそこへ立停った。
四
急に立停って、幹太郎は向うを見た。
『島屋』から三人の侍が出て、互いになにか話したり笑ったりしながら、こっちへ来る。おそらく昨夜は泊ったのだろう、三人とも赤い顔をしているし、まん中の一人はひょろひょろするほど酔っており、左右から支えられて、ようやく歩いていた。
――悪いやつに会ったな。
幹太郎は舌打ちをした。
左にいるのが納屋孝之助、右が掛札五枚めの村田市之丞、まん中にいるのは次席師範代の川地東吾である。川地はふだんは温和しいが、ひどく酒癖が悪くて、酔うと手のつけられないようなことがよくあった。
除けるには、まにあわない。
距離があまりに近かったし、こちらと同時に、向うの三人も気づいていた。
納屋孝之助は、どきっとしたらしい。あのときの(傷はもう治ったのだろう)勝負が肝に銘じているとみえ、さっと顔色を変え、躯を硬ばらせた。
「よう、珍しいな」
川地東吾が呼びかけた。
それを聞いて、お豊と幸坊は幹太郎のうしろへ隠れた。納屋は危険を感じたようで、村田市之丞に眼くばせをし、東吾を黙らせようとした。