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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

二

ととめた。ちょっとまえに戻って二人の試合を見ていたらしい。大石に向って「こんど立合えば貴方の勝ちは明白である。御教授かたじけない」と、鄭重に一礼し、おちかづきに一盞さしあげたいと云って、自分から奥へ案内した。

大石進はらいらくに、饗応を受けたうえ、深喜が「神妙な技を使う」と褒めた。

「ふしぎな刀法だ」と、彼は繰り返した、「失礼ながら御流儀とは違うようだし、これまでかつてみたことのない太刀筋だと思う、いい御門人をおもちで楽しみでしょう」

周作はそらすように、ただ微笑するだけであった。

その夜、深喜は周作に烈しく叱られた。

二

大石進が去ったあと――

周作は塚田や海保ら(栄次郎も含めて)七人の者を呼びつけて叱った。

他流の剣士と試合をするばあいは、必ず周作の許しを得なければならない。それが千葉道場の規則である。にもかかわらず、周作の留守にその禁をやぶったのは、二重の罪である。

――七人とも三日間の謹慎だ。

と、怒った。

平手深喜は謹慎はまぬかれた。

だが、その夜、一人だけ周作に呼びつけられて「どうしてあんな技を使ったか」と責められた。

「やむを得なかったのです」