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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

四

この春の菱川の騒ぎのときも、そのもとはあさのふしだらから出たことであって、それはかなりひろく知られているのだが、惣兵衛はなんの処置もしなかった。だから、こんども妻に関する限り、うやむやに済ますのではないか、と久三郎は云った。

「それならいい、――そうだとすれば、野口の罪も軽く済むかもしれないからな」

「どうですかね」と、久三郎はまた首を振った、「三十も年の違う妻をもった老人の気持というやつはべつですからね、それに二人は駈落ちをして、芝居茶屋などで寝込をみつかったんですから、おそらく老人は逆上していると思いますがね」

幹太郎は唸った。それから屹と久三郎を見て云った。

「富原さんにすぐ会えるようにしてくれないか」

四

白川久三郎は明らかに当惑の色をみせた。

問題が『密通』という醜聞であるし、女の良人は、下屋敷の重職である。これに対して、平手幹太郎は単に『新任の剣法師範』にすぎない。伊達藩にとっては外部の人間だから、こんな問題で、しかも当事者の重職が面会するとは思えないのであった。

幹太郎もそれを察した。

「野口は私の門人だ、とすれば、私にも責任がないとはいえない」