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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
秋あらし
一
深喜は木剣を片づけて道場を去った。うしろではなお帆平がどなっていた。
「こんな剣術の修行など、なんの足しになるか、神州男児たるものは、いまこそ天下国家のために、起ってその身命を……」
深喜にはそこまでしか聞えなかった。
その翌日から、海保帆平は道場へ来なくなった。気になるので、そっと庄司弁吉に訊いてみると、
「追っぱらわれたのさ」と、云った。
その夜の暴論が千葉周作の耳にはいって、破門されたのだともいうし、他の説では、「千葉先生の推挙で水戸家へ抱えられたのだ」ともいわれた。
「――あの晩のことで破門されたのだとすると、自分も咎められるかもしれないぞ」
深喜はそう思って、四五日心がおちつかなかった。
だが、そういうこともなかったし、六月になると海保帆平が水戸家にいることもわかって、深喜はようやく安心した。
秋あらし
一
九月中旬の或る夕刻――
稽古を終った深喜が、汗をながしていると、面会者があると知らせて来た。
「長の幸助だといっていますよ」と、内門人の少年は云った。
「侍ではなく、職人かなにかのようで、まだ十か十一くらいのちびです。御存じですか」
深喜は「うん」