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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

三

平八はわけを話した。

幹太郎は「あ」といった。平八はかやから聞いたことをすべて話し、そのあとで「いま帰国することは無理だと思う」という、自分の意見も述べた。

幹太郎は黙って頭を垂れた。

「父の一生は失意に終った」と、彼は呟くように云った。

「剣士になろうとして、家も妻子も忘れて修行したが、ついに故山へ帰って鍬を握り、自分の夢をこのおれに托した、おれには父の胸中がよくわかった、一日も早く一流の剣士になって、父によろこんでもらおうと思った、しかし、もうそのときは来ない」

「旅の修行者と試合をしながら亡くなったというのは、いかにも御尊父らしいと思う」

「父は純粋な人だった」と、幹太郎は云った、「才能はなかったかもしれないが、純粋に刀法へうちこみ、刀法のほかにはなんにも眼もくれなかった、おれは、まだ死なせたくなかった、もう少し生きていてもらいたかったよ」

彼の眼から激しく涙がこぼれ落ちた。

三

玄関に人の声がしたのを、二人は気がつかなかった。

「先生、平手先生」と、玄関で高く呼んだ。

幹太郎は答えながら立った。道場の監事をしている白川久三郎で、

「遠藤老職が呼んでいる」