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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
二
――それであのとき、お豊はあんな啖呵を切ったのだな。
裏長屋の一と間で、お豊と三平が喧嘩になったとき、お豊は「あたしのおかげでやっとおまんまにありついている」と罵った。あれはそういうわけだったのか、と深喜はようやく合点した。
河内屋の隠居は、その後もお豊のことを心配し、人を使って行方を捜させていた。――半年あまりも根気よく捜させ、ようやく金杉にいることがわかり、三平を遣って「本所へ戻るように」とすすめた。二度、三度。番頭の松造まで三平に付けてやった。
「それはね、お豊さんのねえさんが、金杉でまたぐれだしたからなんだよ」と、幸助が云った。
ぐれだしたのは、平手さんのためだぜ。平手さんが薄情だったからさ。お豊さんのねえさんはそう云ってた。平手さんがそんなに薄情なら、あたしはあたしで、勝手にするってさ。そして、ぐれだしちゃったんだ、と幸助は云った。
「そのくせ、平手さんが来て帰ったあとは、半日くらいも泣いていたんだ、ほんとだぜ、おれが見ていても、辛そうだったぜ」
二
深喜は顔を歪めた。
どこかが痛みでもするように、顔を歪めながら幸助から眼をそむけた。金杉の家へ、彼がいって帰ったあと、半日くらいも泣いていたという、平手さんがそんなに薄情なら、あたしはあたしで勝手なことをする、そういってぐれ始めたという。