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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
よせる波
一
お豊の高い声に、男の声がまじっている。幹太郎は格子口へ近づいて、かれらの酔っているらしい声をたしかめてから、黙って格子をあけてはいった。
よせる波
一
奥の声はやまなかった。
幹太郎が格子戸をあけ、障子をあけてあがっても、無遠慮に笑ったり話したりする奥の声はやむようすがなかった。
彼は刀を腰から脱し、左手に持って、六畳の唐紙を手荒くあけた。
行灯が一つ、燭台が一つ、お豊のほかに男が二人、酒肴の膳をそれぞれ前に置いて、浴衣の裾を捲り、腕捲りをし、一人は片肌ぬぎになって、二人とも大あぐらをかいて飲んでいた。
唐紙をあけたとき、初めにお豊がこっちを見た。男たちはこちらに背を向けていて、気づかなかったらしい。お豊もすぐには幹太郎がわからず「誰、又さんかえ」と云いかけ、それから「あ」と口をあいた。
幹太郎はお豊をにらんだ。
派手な柄の浴衣を着て、片膝を立て、立てた膝頭へ肱をつき、その手に盃を持っていた。立てた膝前が割れて、水色のけだしがこぼれ、すんなりと白い脛が見えている。――嬌かしいというよりは、伝法な、じだらくな恰好で、幹太郎はかっとなった。
「この男たちは、なんだ」