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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
三
と、幸坊が云った。
振返ってみると、いま来た河岸っぷちを、二人の男たちの走って来るのが見えた。
三
幹太郎はお豊に振返った。
「あいつのなかまか」
お豊は眼をしかめ、走って来る男たちを、たしかめようとしたが、「あたし、ちか眼だから、わからない」と、首を振った。
「長には、わかるよ」と、幸坊がじだんだを踏んだ。
「てっぽう安に本野のやつだよ、ねえちゃん、早く逃げなくっちゃだめだよ」
「よし、あの橋を渡れ」と、幹太郎が云った、「天神さまの裏門のほうに、島屋という茶屋がある。そこへいって待っててくれ」
「裏門のほうで、島屋ね」
お豊は頷き、幸坊といっしょに走っていった。
幹太郎は道のまん中に立って、待った。
二人の男は近づいて来た。あんまり気負いこんだ走りかたなので、往来の人たちは吃驚して、道を除け、路傍の家からは、とびだして来て眺める者があった。
一人は五分月代の肥えた男で、洗いざらしの印半纒で作った長半纒を着、尻切れ草履をはいていた。他の一人は三十歳ばかりの、御家人くずれだろう、色の褪せた木綿の黒紋付にようやくそれと判別できる雪駄をはき、腰に刀を一本だけ差している。