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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

なりわい

一

「拾ってってくれる、――」

幹太郎は震えながら反問した。

長と呼ばれた子供が、「この人は顎を出しているらしいよ」と云った。

男は幹太郎に、「そうだよ」と云った。

「拾ったうえに、うどんの一杯ぐれえ、ふるまってくれるかもしれねえ」

「三公、喧嘩はよしとくれ」と、娘が云った。

「無礼なことを云うな」

幹太郎がどなった。長が「おじさんよしなよ」と叫んだ。それが幹太郎をもっと怒らせた。二十余日このかた屈辱に満ちた明け昏れと、いま飢えと寒さとで、みじめにちぢみあがっている自分の姿を思うと、その男の卑しい嘲弄がどうにもがまんできなかった。

――こいつ、と幹太郎は刀を抜いた。

娘が「三ちゃん」と叫び、男が怒号しながらとびあがった。幹太郎の足の下でどぶ板が割れ、彼は横ざまに転倒した。

なりわい

一

幹太郎は天床を眺めていた。

薄い古夜具にくるまって、仰向けに手足を伸ばしたまま、箱枕の当るところが、痛くなると、僅かに頭の位置を変えるほか、身動きもせずに、さっきからぼんやりと、天床を眺めていた。

「平手さん」

襖の向うで、低いしゃがれた声が云った。

お豊が眼をさましたのだろう、幹太郎は、「うん」