轻松读懂日语经典作品
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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
そこは本所四つ目の路地裏であった。棟が波を打ち、柱の傾いた長屋が並び、それがほとんど空家らしい。隙間だらけで、乾割れた雨戸が閉ったままだし、夕餉どきだというのに炊ぎの煙も見えず、人の声もしなかった。
「どうしてみんな空家なんだ」と、幹太郎は呟き、そして、ふところ手をしたままで、がたがたと震えた。
「こんな裏長屋が、こんなに揃って空家だなんて、おかしなことがあるもんだ」
彼は顔を歪めた。
空腹と、寒さと疲れとで、頭が痺れ、体が宙に浮いているような感じだった。
「ひどいことになったな」と、彼は呟いた、「なんとかしなければならない」
本当になんとかしなければならない。どうしよう。もう待ったなしだ。ぎりぎり結着だぞ、と彼は思った。
淵辺の道場を出てから二十余日、天保四年の正月も、中旬をもう過ぎていた。
僅か二十余日でどん詰りまで来た。もう五日も食事らしい食事をしないし、一昨夜からは木賃宿に泊る銭もなく、空家へ一と晩、ゆうべは石原町の、なんの神社とも知れない、小さな社殿の中にもぐりこんで、夜を明かした。
「旅籠町へゆこうか」
彼は足もとへ眼をおとした。
旅籠町の『山源』