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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
稽古おさめが済むと、正月の四日まで帰省する。内門人、特に年少の者たちには、それがはねをのばす好い期間になっていた。
その日――主客と幹部が奥へ移ったあと、道場ではみんなくつろいで飲みだした。幹太郎は飲まないので、隣りに坐った秋田平八と話しながら、彼に酌をしたり、肴を摘んだりしていた。
平八は幹太郎より三つ年長の二十五歳で、いちじは掛札三席までいったが、三年まえに右足の脛を骨折して跛になった。それ以来ずっと道場の経理を担当しているが、刀法にはすぐれた鑑識をもっていて、幹太郎にとっては誰よりも――ときには師の十左衛門よりも、よき助言者であった。
主客を奥へ送っていった少年たちのうち、村上小次郎が戻って来て、幹太郎の耳へ、
「先生が外出しないようにと仰しゃってます」と、囁いた。
幹太郎はどきっとした。
「なにか御用でもあるのか」
「あとでお話があるそうです」
そう囁いて少年は去った。少年たちは道場の酒宴に加わることができない。かれらはかれらだけで祝いの膳に坐るのであった。
「なんだ――」
少年が去ると秋田平八が振向いた。幹太郎は少年の伝言を告げた。
「そうか、いよいよきたな」