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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

――お豊や幸坊をやしなっているのに、家族を呼べないというのはどういうことだ。

と、思ったのである。

「しかし――」

と、平八は云った。

「もしあれなら、金杉にいるという二人のことは、私がなんとか考えてもいいぜ」

「なんとかとは」

「お豊という女は――私はいちど会っただけでよくわからないが、水しょうばいをしていたらしいじゃないか、よければ『山源』に頼んで、女中に使ってもらうという法もある」

「それは、できない」

幹太郎は首を振った。

他人には理解できないかもしれないが、お豊から受けた恩は大きい、と幹太郎は云った。単に飢を救われただけでなく病中の面倒までみてもらった。それも楽な生活をしているわけではなく、お豊は料理茶屋のかよい女中で稼いでいた。年もゆかない娘が、そんな稼ぎをしながら男一人を救ってくれたのである。また、お豊をくいものにしようと覘っている男たちが数人いるから『山源』のような店で働いていればその男たちにみつかって、伴れ戻される危険もあるだろう。自分としてはお豊を堅気な女に立直らせ、まともな生活のできるようにするか、適当な相手と結婚させるか、どちらかにおちつくまで世話をするつもりだ、と幹太郎は云いきった。