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はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页
幹太郎が稽古をつけながら見ると、誰も「切尖はずし」の手をこころみる者はなかった。
上村弥兵衛が幹太郎に「願います」と云って来た。幹太郎は頷いて「木剣を持て」と云った。
「木剣ですか」
「そうだ、おれは竹刀でいい」
と云ってしまってから、彼は顔が熱くなるように思った。稽古のとき相手に木剣を持たせるのはよくやることで、決していまが初めてではないのだが、やはり「千葉周作にみせてやろう」という無意識の衝動に駆られたらしい。くそっと、自分に腹が立ち、それが逆に闘志となった。
「思いきってかかれ」と、幹太郎は云って位取をした。
弥兵衛が木剣を取ったので、他の五人は稽古をやめた。それも従来の習慣で、門人に木剣を持たせるときは、幹太郎が充分に技を使うからであった。――五人の者たちは隅へさがって、見学のために坐った。
間合は約二間、弥兵衛は青眼に構えた。幹太郎は下段、弥兵衛が第一声を放ち、第二声を放った。
――踊るなよ、と、幹太郎は心のなかで弥兵衛に云った。
彼が常に戒めているのは『踊るな』ということであった。少し腕ができてくると、つい知らず派手な動きかたをする。
「それは舞踊に等しい」