Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
鏡花と桂月
駅へ降りて、交番できくと、ドイツ皇帝みたいなヒゲの警官がいて、鏡花氏の家は、すぐ分った。あの道を、右へ曲って突き当って……と、教えてくれておいてから、もう一度、ヒゲの先をひねり上げて、
「ときに、泉という人は、何を商売にする人ですか」
「有名な小説家ですよ」
「ははあ、そうですか。どうも職業が分らなかったものですから……」
と、避暑客名簿をひろげて、ちび筆の穂をかみながら、書き入れをはじめた。
泉鏡花といえば、すでに立派な一流であった。しかし、有名なのは、文学愛好家の間だけであって、おまわりさんにも、駅員さんにも、というわけではなかった。大衆文学という名前は、まだ生れていなかった。
鏡花と桂月
逗子に避暑した泉鏡花氏は、二階を仕事場にあてていた。寺小屋式の机には、九谷焼の一輪ざしと、水晶のウサギと、万年筆が載っていた。
棒縞のゆかたをくつろげた胸に紐がななめに見えていたのは、何かのお守袋だろう。粋な中形に洗い髪の夫人が傍から団扇の風を送ってくれる。
番町の家は暑いから、急に思い立って、ここへ来た。山があって、海があって、小説の舞台には、ちょうどいい。というような話から、つい、食べ物のことになる。