Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
話は、明治三十七年の早春にさかのぼる。日露の国交急迫をつげて、日本は起つのか、起たぬのか。強大国ロシアを敵として戦う決意があるのか、ないのか。
佐世保に集結した連合艦隊は、士気を鼓舞するためとあって、乗組み将士の大運動会を催した。
「佐世保のうしろに高い山がある。なんという山だったかな。あれへ、五人一組になって駈け上がる競走をやったのだ」
山頂には、東郷大将以下の首脳部と記者団の一行が待っている。
「一着は広瀬少佐の率いる戦艦朝日の組じゃった」
「のちの軍神?」
「そうじゃ。あの広瀬じゃ」
とにかく大変な意気込みだった。記者団一行は、その壮烈さに胸を打たれ、金三百円を醵出して、せんべいでも買ってくれと言ったが、これは、丁重に謝絶された。
ところで問題は報道である。上村中将(まだ大将になっていなかった)は、記者団全員を集めて言った。
「これが、佐世保以外に洩れたら、戦争は負けですぞ。どうか、秘密を守ってもらいたい」
むろん、記者団も協力を誓った。
しかし、これほどのニュースである。一社や二社は抜けがけをするかも知れんと、電報局その他へ、秘かに手配をしておいたが、ついに一人の違反もなかった。