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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

面白いわねえ、私たちには何とどっさりのことがかくされて体裁をつくろわれて在ることでしょう、そのこと考えると、可笑しいやら妙なやら。健康のこと、結婚話がきまってから証明書のようなものを貰ったそうです、お母さんのお話。見たところも日やけ酒やけしているが、達ちゃんごく丈夫そうですからいいでしょう。

昨夜は富ちゃんとすっかり話してね。ここの家へ来て座敷へ通ったら紫檀の卓の上に、まるで七八十歳の爺さんでもいじりそうな、ろくでもない小さい茶道具がずらりと並べてあってね、私は何とも云えず物哀れを感じました。だって、昼間は土まびれで火薬だ土方だと、巻ゲートルで働いていて、うちへかえれば母と小さい妹とだけで、そしてこんな古道具屋のまねみたいなことしているのかと思ったら本当に哀れになってしまった。富ちゃんの気持もずっと二半でいたらしいのです、この頃は。

でも、この家の人たちの気分というものもなかなか一つあります。何というのかしら、小父さんがずっとああいう生活で、まともな道を日々ちゃんちゃんと踏んで生活して来ていないから、こういうことに対する一同の態度も、どこやら自主的にテキパキしないで、一つの力が常に家庭に欠けている。