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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

一月二日

アランがそのことを云っているのは面白く思いました。なぐさめることではなくて、なぐさめられる心、それについて。芸術家の現実を統括してゆく力として。詩性として。もちろんこの判断はアランの限度のうちで云われているのですけれども。(哲学的に、ね)文学の面白さとこの人間精神のコンソレイションの関係は面白いこと。誰もつきつめて居りませんものね。私は自分の文学はそういう輝きで飾りとうございます、では又。このおしまいの部分は、面白いのよ、私の成長の歴史として。又かきます。

一月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

一月二日  第二信

お喋りのつづき。

小説の面白さと精神のコンソレイションの話。この関係の微妙さと、高低の相異のひどさは、考えると面白いこと。精神に与えるコンソレイションが宗教で代られた(文学における宗教味)時代もあり、道徳で代られた時代があり(ピューリタン時代)文学、すくなくとも小説のこのものは、現実そのもののようなねばり、多様性、動き、関係を、すっかり掌握してゆく作家の写実ではなくて、そこに一つの見とおしをもっている感覚にまで及んだ知性、そういうリアリティーが、精神に与える満足と慰安と生活への鼓舞というもの。