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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

八月十八日

狭さがわかります。「顔」「伊太利亜の古陶」「小村淡彩」などは題材は面白いのです。気持も一寸とらえているけれど、生活の息が不足しています。あくどさがない、いい意味でも。濃い色とつよい息がありません。破れたところがない。その頃私は芥川の作品が殆ど大部分一種の作文だということを、理解していなくて感覚で反撥してだけいた、そのことがよくわかるようなものです。少し気持がわるくなったからもうこれでおやめ。本当にお気分はどうでしょうね。

八月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

八月十一日  第五十五信

きょうの御気分はどうでしょう。さむいようなむすような天気ね。すこしはお落付きなさいましたか?

きのうの「ひどく心配しなくていいよ」という気持と苦笑との交りあった極めて複雑な表情が、目にのこっていて、やっぱりこうして手紙かきはじめます。

ほんとにどんなかしら。お眠りなさいましたか。

専門家のこと、いい見当がつきました。おめにかかって申しますが。非常にふさわしいと思われる選定です。月曜日にいろいろこまかくお話しいたします、まち遠しい。

この天候は一般に大変こたえているようです、いろんな人が調子をわるくしています。