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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

七月九日

作家のいろいろの内部的な構成なんて、実に一朝一夕ではないものですね。だから作家の生活の周囲の意味が一層云われるわけです。

私はどうしてだか、この頃人間の心のゆたかさ、面白さ、その面白さの刻々の流れが、いやに新しくわかって来ていて、そのものが時々刻々の接触にないのが本当に本当に惜しくて仕方なく思われる折が多うございます。この心持を興味ふかく思います。何か作家としての新しい展開のモメントがここにかくれていることが感じられて。根源的には全く妻としてのそういう渇望がねじを巻かれて、そういうものへもかかわってゆく過程も面白いことね。なかなか面白いところね。では又お体を呉々お大切に。

七月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

七月七日  第四十四信

もうすっかり、本きまりの暑さになりました。なかなかでしょう、どうぞうまい工夫で、いくらかはしのぎよくお暮し下さい。私の方は、スダレをはったりして、結局二階へ籠城よ。

六日に一番終りの原稿を送って、ホッとしてそちらへ行ったわけでした。ですから、きょうは本当に本当に久しぶりにドンタクでね。ああ、ああと、腹の底から気持のいい太い息をついて、ゆっくり朝飯をたべました。