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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
五月二日
久しぶりで随分どっさりいろいろと話しました。私はこの手紙がなるたけ早く着くようにと心から願います。
今夜は枕の下に詩集をおき眠ります。その中からの抜きがきを近いうちお送りいたしましょうね。
五月二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
五月二日 第三十信
今頃多賀ちゃんが、あおい着物で、そちらで喋っている頃でしょうか、それともぼんやりこしかけてラウドスピーカアをきいている時分かしら。
私は今『文芸』の校正が終りました。先月おくれた「転轍」を今日にまわしたのです。ゲラの紙が全く粗末なものだから字がしみて本当にきたないの。よめるかしら。よめないかしら。そう思いつつ封をしたところです。『文芸』は只でさえ、ミスの多いところです。
ひどい風になったこと。例によってうちはガタガタ云って鳴りはためいて居ります。
御気分はいかが? そちらは、こんな風でも、仰向いてねている顔に天井うらの無数の埃がふりかかる感じだけはありませんですね。
きのう、私は顔を仰向け青葉のそよぎがそのまま自分の体となったような気分でかえりました。
今年私は桜も美しいと思って見たし、若葉の色もこんなに眼や気持に沁みとおって。