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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
九月六日
苦しい気持に何といろいろの内容があるのでしょう。私はよく時間的に大変遠くにおいて感じてさえ随分切迫した感情を経験していたのですもの。そして、今の思いになってみれば其に大変加わる立体的な奥ゆきがあって、その立体的なものは、男の心とまたおのずからちがった女の心と肉体との底に眠っているものの目ざめのようなところがあって。色あいときめのこまやかなこういう苦しさ。では又ね。
甲 三
乙 八 このところ、でもいくらかごちゃついて。床に入っていて眠らなかったこと、どっ
丙 二 ちへ入れたらいいのでしょう。
本よみは休みです。じき又はじめますが。
ではおやすみなさい。
九月六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
九月六日 第六十一信
四日朝のお手紙。あああなたは笑っていらっしゃるのね、私だってつり込まれて笑うけれど、馬のやせるのはたべるものがないときよ。そこが馬の馬たるところよ。私は人間で、れっきとした女で、だから肥ったってやせるときもあるというのは全くユーモラスね。しかし、ユーモラスという表現には、何と含蓄があるでしょう。何とこまかい眼差しのニュアンスがこもっているでしょう。