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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
十月十八日
三月か四月に『日本評論』に小説かく約束しました。これから来年にかけて小説たっぷりかいて見ましょうね。
もう四時よ、あきれたものね。けさ起きて、ゆっくり、日曜らしいパンたべて、二階へあがって五枚の感想をかいて、手紙かきはじめたのは十時でした。おひるに一寸おりたぎりよ。ではこんどこそ、これでおしまい。のぼせいかがでしょう? お大切に。
十月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十月十六日 第七十一信
ひどい雨が又降り出しましたね。このザアザアの音。雨の音ききながらぐっすり眠るの、何といい心持でしょう。私たちほんとにほっとして居ります。あやしげな者がこのあたりから退治されたから。
夜のしずかな人気のない往来の袋小路を照す灯の下へ、ジリリ、ジリリと黒い姿が出て来て、白い姿を垣根へおしつけたあの殺気は、強烈な印象です。怪我というほどのことがなくてようございました。往来を見おろせる窓は有益ね。高い窓からの声は、下の往来でもみ合う砂利の音や罵声をこして、四隣にひびきます。しかし近来、人気のわるくなったこと沁々と感じます。稲ちゃんのところへやはり二階づたいに入った由。