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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
六月二日午後
あれいいでしょう? 一生つかうように黄楊にしたのです、水晶ではわれますから。一番はじめ父がこしらえてくれた真円の中に百合子と図案風に入れたのはかけて、輪がかけました。
こんどは野原へ泊りに行ってからでないと手紙かけませんでしょう、だって二階は若御夫婦の巣ですから、下にいるのだから、キャーキャーパタパタシュウシュウ(これはポンプの音よ)ですものね。お風邪めさないように。さ、又はじめます。ここの電燈はすこし暗いこと、夕飯はかえってから。では出かける迄に又。
〔欄外に〕ここにいるとお客のないことだけはたしかで、一安心ね。
六月二日午後 〔豊島区西巣鴨一ノ三二七七巣鴨拘置所の宮本顕治宛 豊島区目白三ノ三五七〇より(封書 速達)〕
六月二日 第三十六信
きょうはむしあついこと。その上、私は何と上気せていることでしょう! 世間では二兎を追うべからずと申しますが、仕事と、本を見つけることと、旅行の仕度と三兎を追っていて、到頭ネをあげて、『文芸』のつづきはのばしてしまいました。一日図書館が休業であったためにこの始末です。しかし、今夜眠らずそれをかいて、又明夜は汽車の中ですぐ御法事で、その次の夜はどうせ家じゅうそわついているというのよりは、却って今夜どっさり眠るのがよろしいでしょう。