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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

六月九日

コードバンの靴にスフ入りの背広で、万年筆はチョッキの胸ポケットへさすものと初めて会得して、颯爽と出発いたしました。

この分はこれで終り、つづけてもう一つかきます。

[自注2]組合――隣組のような町内の組合。

六月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

六月九日  島田からの第二信

さて、又つづきを。

島田宛の三日づけのお手紙ありがとう、案外に早く五日ごろ頂きました。

あなたが達ちゃん宛におかきになった速達を、着いたらすぐ読ませて頂きました。本当に懇ろにいろいろおっしゃってあり、達ちゃんも様々に考えましたろう。夫妻ということについてあのひとはいろいろ、あちらにいる間も考えて来たようです。どういうことが夫婦として最大の不幸と不安であるかということも沁々とわかってかえったらしい風です。周囲で、その不安が非常に語られて居り、現実のこととしても多くあったらしく。

きっとちゃんとやってゆくでしょう、ちゃんとしたそして十分愛らしい娘さんですから。お酒のことだって、本当よ。でもあなた迄それを仰云るのは、きっと多賀ちゃんお前が喋ったからだろうって、お母さんお叱りになった由。