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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
十一月九日
きのう『白堊紀』[自注8]をよんでいろいろ感じていたところであったので、このお手紙に「『敗北』の文学」について書かれていること様々に感想をそそります。あすこにあるいくつかの作品はずーっと前にもよんだのでした。そして、そのときとしての感じをうけたのでしたが、今はあれをみると歴史的に人間の成長というものが感じられ、おどろきます。一九二七年と云えば「『敗北』の文学」の前年でしょう? あの作品のもっている様々の特徴は、やはり非常にその人のものね。もとよんだときには、よむ心の主観的な感動と愛着とを先に立てて居りましたが、今はもっとちゃんと稟質としてそこにあるもの、そこから成育して来たものをくみとることが出来て、感じることも一層深うございました。何というつよく迅い成長でしたろう。音がきこえるようね。そして、そのつよい迅い成熟の過程であれらの作品にこもっている確りした密度の高さ、やさしさ、感受性はちっとも粗大にされていないで、その押しでのびて来ている。このところもいろいろと私には興味あるところです。「三等室より」[自注9]は、もと私の感じとれなかったような、様々の内容をふくんでいて、そのテーマの語りかたそのものにあらわれている精神史の意味で大変感銘されます。