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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

六月九日

店もそういうクーポンによって配給をうけるのですから。もう島田へお砂糖もお送り出来ません。

私が立つ迄に、お手紙がつけばいいこと、あやしいかしら。

寿江子は七日にそちらへ上ります。私はいろいろのコンディションから、きょうは本当にくたびれていること。これからすこし横になりましょう。あした汽車にのりこんで、スーと動き出したら、どんなにヤレヤレといい心持でしょう、さぞさぞ、眠ることでしょうね。となりがたかちゃんで本当に気が楽です、体のうしろへ脚をのばさせても貰えますし。野原へ息ぬきにゆくのもたのしみです、変った町の様子や、お嫁さんの可愛さや、又こまかく申上げます。どうぞおたのしみに。

六月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県熊毛郡周南町上島田より(封書)〕

六月九日  島田第一信

ここは野原の家の座敷の廊下です。気持のいい海辺らしい風が吹いていて、同じ廊下のところにおいてある机で冨美子が宿題をしています。すぐ庭先の鶏舎の朝鮮人の長屋で子供がヤーヤーヤーとないていて、母親が、パアパア何とかとこわいような優しいような声を出して薪をわっています。多賀子はとなりの部屋で虹ヶ浜駅へ特急券をかいにゆく仕度をしていて、富雄さんは昼寝にかえって来ているところ。