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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

そんなことが一晩もなかったと云ったら、それは余り御体裁と申すものでございましょう。我が夫は天の如し、あざむくべからず、という家憲でございますからね。昼間フーフーでやり通すから、どうやらつづいているわけでしょう。その代り、というわけで、読書は御免下さい。迚もやれませんでした。又継続しますから御安心下さい。

私はこの頃図書館がすきと云うに近くなりました。あすこにいれば決してお客はありません。ちょいちょい何か囁き合って、こっち見るひとたちはあっても、いきなりいつかのひとのように、そばへよって来るひとはマアありませんですから。本をよむにはいいわ、そういう勉強のときは。只、ものは書けません。特別室があればいいのねえ、大英博物館の図書館のように。そうしたら、本当にどんなに有効につかえるでしょう。でも、いろいろの点からよめる本とよんでいられない本とがあってね。そのことも面白い文化の諸相です。

ところで六月二十六日朝のお手紙の前の分というのは月が変ってもいまだに出現いたしません。どこへ行ったのでしょうね、又そちらのところではなかったのかしら。私はそれで本望だけれど、郵便やさんは字だけよむのでね、不便ね。