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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
健造たちのうれしい顔ったら! 何てうれしそうなんだろう、顔にウレシイとかいてある、と私が云うと、とろけそうな顔に笑って、体をよじっている。その稲ちゃんのところで又一人にげられたの、可笑しいでしょう、二人小さい女の子がいた上の方が、姉娘。よくない娘だったからまアいいのですって。皆、暮から正月へ荒っぽい金がほしいのね。派出婦なんかきっと三十日から三箇日ぐらいやとわれて、ガタガタやって、よけいに金をとるというわけなのでしょう。短く働いて数をこなして、ティップなんかあっちこっちで貰いたい、そういうわけなのね。こんなところでも私は日本の風習の混乱を感じます。何か手つだって貰った女へのような心づけのしかたをして、しかし派出婦として高く日給とるだけには技能もなく、おもしろいわね。派出婦のスポイルのされかたがよくわかりました。家庭笑劇一幕。
三十一日は一日二人で働いて、私は二階の本の整理。文庫本がまとまらなくてやり切れないので、去年の冬、牛込の方、というところから送られて来た戸棚の本箱、どっかの古物屋でお買いになったらしいの、あれを二階へあげて、あなたの坐ってつかっていらした大きい机の上にのせて、そこへ文庫大半しまって、大変まとまりました。