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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
私はこの前の前の手紙であったかに、「かきかたがむずかしいので」云々と云っていたでしょう?「表現のしかたではなく」とあなたはくりかえしくりかえしおっしゃる。かきかたがむずかしいと思ってつい、というそのことにとりも直さず把握の不たしかさが示されているというのは、実に生々としているわね。大変はっきりわかったわ。
私の頭のどこかに女らしい軽率さがあるのね。こういうことについて大変感じます。勿論、それは不十分な現実の理解に原因していると云えるけれど、たとえば、あのときの気持(書いているとき、シェクスピアのところなんか)そのこと、思っているのよ。気にかけているの。それでそこを突こまないでしまうようなところ。大きい欠点であると思います。こういう点は悲しいと思います。私のものわかりの早いところの裏にくっついている一つの弱点です。大いに気をつけます。私はもっともっとねっちりとしなくては駄目ね。もっともっと野暮くたい精神をもたなくてはなりません。もっと追求の精神を。
世界史との連関でということは私たちの生活の感情となっているわけです。文学史なんかそうでなくてはものの云われる意味、日本文学として云われる意味を失います。