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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

ああ、何と私はもっと早く心の成長をしたいでしょう。ちょいとうっかりすると軽率になったりするところのない、そんな心配のない心になりたいでしょうねえ。

野蛮への楯としてのヒューマニズムの話。ここも又、よ。自分ではそれが質的一般性に立って云われるべきものでないのは知っているつもりなのです。一般から云おうというつもりはないのです。その時代に、そのような楯ももち出されるプラスとマイナスの面を明らかにしたかったの。マイナスの歴史の断面から発生したプラスとでもいうような本質であるから。たとえば作品の現実では各人の各様の持味の肯定になって、石坂だの岡本だのという怪花をひらいたのだ、と。さもなければ、舟橋のように人情に堕した、と。あの部分は、これから後五年ぐらいとまとめて本にするとき、書き直されるべきですね。

こんどこの本がまとまったことと、「朝の風」をかいたことは私にとって実に意義あることでした。本のまとまった意義は、こんな手紙もいただけるモメントとなったという意味で。「朝の風」は、私の感情の切ない底をついているという意味で。

いろいろのこまかい、しかも実質的なこと、少なからず得て居ります。