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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

一人も暮の銀座をこれまで歩いたことなしの連中なので(私のほかは)それぞれ珍しく。たかちゃんふしぎな気がしましたって。それでもかえりの省線かけられて、かえってふろに入ってねたのが、午前三時。

元旦にはゆっくりおきて、九時頃お雑煮こしらえて、二人ともちゃんとおしゃれして、おとそのんで、あなたのおめでとう武運長久をやって、一日ゆっくりして、たかちゃんのお喋りをききました。

いろいろの風があちらの元旦とちがいますってね。おとそしたりしないのだってね。面白がっていた。私は去年は病院ですし、その前の年はミルクホール問題の正月ですもの、ことし位はのんびりしたくて、ちゃんとやったわけです。

本年は年賀郵便というものは大減です。1/10以下です。宮本顕治先生として鱒書房というのからお年賀が来て居ります、廻送いたします、お出先へ(!)。晨ちゃんがよこしています。多摩川保養園というのに入っている様子です。

「人の世の深き苦み笑み耐へて 生きぬく君を尊しと思ふ」こんな和歌がかいてあります。「経過は順調故一層闘病精神を発揮し徹底的に克服するつもり」とかいています。こんな歌をよむ心は、やはり本人もさまざまの感懐があるからのことでしょう。