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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

そこが、私の評論家でも歴史家でもないところであるわけでしょうが。

仕事上の交渉は云々のこと。私なんか実にそうね。特にその点神経も働くわけですけれど。婦人の作家にしろ何にしろ、その点がルーズなひと、逆に個人的な何かで仕事をひろげて行こうとしたりする人で、しゃんとした社会的存在をつづけるものはありません。

それは日本の社会がおくれているということが変な逆作用をいたしますからね。あの某々が特に接触のある某々だからと、公人として便宜を得るなどということは万々ありませんね。それを女のひとたちはおくれていることから理解しないのよ。女こそ、猶個人関係なんかけとばした仕事でものを云ってゆかなければ、すぐ個人関係の推移とともにどうにかされてしまうことを十分理解しないのです。そして、ひどい軽侮をうけている、かげでね。

私なんか、だから特殊な便宜もないし、非個人的であることから、私を知っていたら云えないような見当ちがいの悪口も云われるけれど、そのような点でちがった質のことはひと言も云わせないところあり、そこが小面にくいということになってあらわされたりもするのよ。読者にかけている期待、読者に負うている責任、その実感とその努力とは、個人的なものを間に挾んで仕事をする人間には到底理解されないことです。