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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页

青空文庫

二

だが、さびしくないことはない。苦しくないことはない。そのとき、ふいと、気が狂ったように、炭屋の二階からとび出して、聖天下の境内で、縄飛びをしている子供たちの群れへ交じって、

「おじさんも入れてくれ」

と、一緒になって、縄飛びをやっている坊主頭の彼の姿を見ることもあった。

二

稽古をしまうと、

「そうそう」

思いだしたように、お喜代が云った。

「明日、旦那が、私と浜中屋のお菊ちゃんを、神明の生姜祭につれて行って下さるというのだけれど、露八さんも、行かない?」

「さあ、それは、堪忍してもらいたいなあ」

「なぜ」

「旦那と、お喜代さんと、行ったらいいさ」

「でも、隣家の露八さんも誘って来いと云うんですもの」

「向うはいいかも知れないが、こっちが、やりきれない」

「そんな人じゃない、それは、さっぱりした人です。それに、私がこうして、露八さんを世話しているのに、一度も、ひき会わせないのも変だし……。ね、行って下さいよ」

「そんなに云うなら、行ってもいいが、どうも、この頭がまだ、気がさして、世間を歩く気がしないのだ」

「いつまで、鬱ぎこんでいないで、大手を振って、歩けばいいじゃありませんか。