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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

三月十二日

隆二さんが初雛を祝って、左の歌を下さいました。

はしきやしマダム・キュリーの絵姿もともにかかげよ桃の節句に。

菱餅と五人囃とその蔭に一葉日記もおくべかりけり。(私はうれしかったから虹色の色紙にかいてあか子にやります)

三月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

三月十二日  第十九信

きょうこそは、よくよく面白い手紙をかかなくてはいけませんね。こんなに御無沙汰したのは珍しいことです、本当に御免下さい。

四日づけのお手紙を六日に頂きました。六日に『日本評論』の小説をかき終るところだったので、そのまま返事かかず。七日におめにかかりに行き。八日九日おめにかかり、十、十一日で二十七枚ほどの小説『改造』へかき終り。きのう夕方の六時にフーッと大きい大きい息をつきました。「三月の第三」というの、あれは「第四」に当るのでした、そしてやっぱり「三月の第四日曜」といたしました。二つめのは「昔の火事」というの。村がどんどん工場地帯になってゆきつつある近郊に、地主のよくばりと、その淋しい孫と、その土地から原始時代の竪穴が出て、そこで発掘が行われてゆくことと、そういう一つの生活の姿です。