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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
私のは生れて初めてのが、右に大きい紋になって一つあるきりです。つくかしら。ついたら痒くて閉口ね。その代り安心です。この間うちは人の集るようなところ随分さけて居りました。林町では浅草に近いから強制の由です。
この頃はお忙しいから「暦」も「素足の娘」も御よみになれないでしょう。「素足の娘」一人称で書かれているものです、若い(十六七歳の)娘が性的に目ざめて来る過程、その途上におこる予期しない或男の行為。そのことから追々生活的にも目ざめて来る心持のうつりかわり。父と娘との風変りな生活。いろいろこまかいものです。決して通俗的に書かれていません。ニュアンスでよませてゆくようなものです。けれども、何だかまだまとまらないけれども、何だか感想があります、何か心にひっかかっています。このひっかかったものは面白いからしきりに考えているのですけれども。何だか変な気というかしっくりしない気というかがするところがあって。本当に何なのでしょう。いずれ又わかったら、どうせかかずにいないでしょうけれど。三人称でかかず一人称のところが、却って作者と距離をこしらえているのかとも思うけれど。