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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

医者を、という相談なの。ケイオーということですが、あすこの三等なんか、前に耳のわるい人のことで経験しているし、変な若い人に切開されては大変だから、宮川さんがよかろうと、十一時二十分前ごろ家を出て、青山の宮川氏の家へゆき、白山の戸台さんのアパートへ案内しそれから、駒込病院に入院して、手術が終ったのが午前三時。まさに盲腸はやぶれようとしていたところでした。それにくっついていた由。おかげで命一つを拾いました。うちへかえったのは朝の七時。

何しろ、この頃自動車がないでしょう。青山へゆくんだって省線、市電、白山にゆくのだって市電、夜なかにかえれず、朝を待つという次第で、病人のときは実に閉口ね。宮川さんは小さい体を実にマメに動してくれるので、ありがたく思いました。

戸台さんたらお酒をのむのがバレてね、腰椎の注射がきかないのですって。腰ツイがきかなければ全身もきかないのだそうで、局部で手術うけて、痛がってうなっていました。アルコールとは何とひどい害悪でしょう、こわいと思いました。命にかかわるような病気のとき、アルコールと性病とは決定的なマイナスですね。「これにこりてお酒やめればいい」