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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

九月二十七日夜

きょうは夕刻までここにいて、夕飯は林町でたべます。開成山からかえりましたから見て来るの。あっちはお米一日に二合七勺で、豆類は一切輸出禁止です。だから名物の枝豆もおみやげになりませんでした。この冬は一人一冬炭一俵の予定だそうで、そちらの生活と平均されて来るわけです。表、今ノート忘れてかけず、この次。この次はじきかきます。汗が出ないのは何と楽でしょう、ねえ。ブロッティングが古くてクニャクニャ、おやおやこんなにすれてしまって。

九月二十七日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

九月二十七日  第六十四信

二十日にかいて下すった手紙、けさつきました。

どんな遠くの国から遙々と来たのでしょうね。こんな手紙、こんなリズムのこもっている手紙。はるばると来た手紙。くたびれもしないで、新鮮な香りをこめて来た手紙。

私は今晩一晩、この返事にかけましょう。ほんとにそうなるのよ、たっぷり一晩の物語。

あのエハガキの文句は、全く省略してあって、おわかりにならなかったのね、それによみちがえてもいらっしゃるし。或は私が書き間違えたのかしら。どうしてだか、ではなくて、どうかしら、この頃なら、ね、というのでした。