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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

この前の手紙、丁度これから女のひとのためのものを二十枚かくところ、というときでしたと思います。ロマンティシズムのことかくと云って居りましたろう。けれども、この問題は別にすこし深めて面白い課題となりそうなので、少年から青年にうつる時代の少年少女の心の様々のたたかい、よろこびと悲しみとを描いた文学についてヘッセの「車輪の下」を話のいとぐちとしてかきました。今、「たけくらべ」なんか随分よまれているのですって。ヘッセにしろ「たけくらべ」にしろ、そういうものを今の若いひとが心の休息所とするというのは何と可哀想でしょう。そういうことを若いひとは憤り、大人はそういう文化しか若いものに与えていないということについて大変慚愧するべきです。髪の毛を一分苅にされた頭で、その中では「たけくらべ」が訴えるものとして感じられているということは、何という深刻さでしょう。

ロマンティシズムについては、こう思うの。これまでの文学の考えかたの型では、いつでもリアリズム対ロマンティシズムという風に扱われて来ています。そして評論をするひとたちはその型のなかで語っているけれども、ダイナミックな文学では、こういう二元的対立はもう古いと思うのです。