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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
久しぶりで床の間の板が見えて来て気持よくなりました。
それから、あなたからのお年玉である『秋声全集』も床の間の本棚の方へ入れて、夕方やっとすみ。二人きりで夕飯の仕度するより、外へ出てたべようと云うプランでしたが、どうともおなかがすいてやり切れなくなって来たので、たかちゃんがお国流に煮たお煮しめでちょっと夕飯たべて、門松をうちつけて、それから誘いに来た佐藤夫妻と栄さんのうちへ行きました。
そしたらね、ここに又一つ話があります。それは栄さんの妹さんが小豆島から来るとき、子供の一切の衣類、自分の平常着、その他木綿、毛糸(但皆純ナリ)の全財産を大きい布団ケースに入れて送って、それはもう三ヵ月近い先のことでしたが、未だ着かず。遂に紛失ということがわかったのですって。ひどいわねえ。どこかへ間違って配達されたらしいの。そしたらあけて見て、そのままぽっぽらしいのです。まだ編んでないような毛糸もどっさりありました由。先ず子供のものでは大困り。皆着たきり雀の正月よ。栄さんと繁治さんケンカしそうになったりして。それからマアこれが三十一日でよかった、そとへでも出ようよ、というわけで、壺井の二人、うちの二人、佐藤さんの二人、この一隊が銀座へ出ました。