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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
十月二十三日
そのコントラスト、その年頃らしくほほえまれます。
十月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十月二十三日 第七十二信
十二日づけのお手紙がこちらについた一番おしまいの分で、あとはいきなり十九日の、きのうつきました。間のは、きっとあしたあたりつくのでしょう。
もしかしたら又いつかのように御自分宛ではないの? 本当にそれは何と自然でしょう!
「南京虫」という芝居を見ました。このお手紙で、あの陽気な場面が髣髴いたします。クロプイという題。クロプイは或る歴史の時期がすぎるともう動物学の標本にしか存在しなくなるの。クロプイ的存在のすべてがそうなるのです。段々の博物学教室に若い世代の男女がぎっしりつまっていてね。びっくりして、クロプイを見ているの。人類学的標本もあらわれて来て、そういうすべてのものが、まわりにウザウザしているなかでそういう未来の図絵を示される見物は何と大笑いに笑いながら、その非存在的本質を感じることか。
部屋をかりに行ってね、先ず私はききました。南京虫いないでしょうか。するとおかみさんは、マア、とんでもない! と両手をひろげてね。