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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

二月七日

を思い出しました。そのとき繁治さんは手をかしておこしていいのかわるいのか、というむずむずした表情をして傍に立っていました。そんなことを思い出し思い出し歩いて。雪のある朝は陸橋の上から池袋の方を眺めた景色もなかなか絵画的です。東京には雪のないとき、この陸橋の下を屋蓋に白く雪をのせた黒い貨車がつづいて通るときも、何か遙かなる心を動かされて面白うございます。

雪や雨はすきです。風は夏の風、でも微風よりつよいと閉口です。

きょうはこれから『文芸』のつづきをかきます。「真知子」に扱われている世界にふれてかきます。鉄兵の「愛情の問題」にある誤りが「真知子」のなかでも別の形で出て居ります。

そちらのバラやカーネーションもこんな光線のなかで、やはり新しく眺められましょう。きょうの雪は私にとって二重三重のよろこばしさです。あなたも皮膚のしっとりした快さでしょう? 本当によかったこと。この雪に向って歓迎の窓をあけたのは発送電の親方のみではありません。では又。お大切に、風邪ひかずを願って居ります。

二月七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

二月七日  第十二信