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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

二月十七日

内在的なものということを云っていらした意味、この頃、人間の問題としても芸術上の問題としても一層わかります。こういうものは全く一つの可能としてあるだけですね、そのものとして内容ではないわね。内容をあらしめる可能としてあるにすぎないというところ、何と考えさせるでしょう。そして何と多くのものが、可能性の色合いというぐらいのところで、日常にも芸術にも生きて行っているでしょう。しかしその可能を内容と成育させてゆくということは何と自分を劬っていられないことでしょう、面白いわ、ねえ。どうぞお大事に。私もいろいろよくやりますから。

二月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

二月十七日

こんな紙をちぎって書いたりして、何となく女学生の恋文のようで可笑しいこと。封筒はちゃんともって来て、紙を忘れて。それでも一寸かいて、気を落付けて、それからきょうはここがしまるまでねばります。

このノートの上に午後二時すぎの日光がチラチラして居ります、ここは日比谷よ。珍しいでしょう。あやうく潰れかかった図書館だけあって、内部の設備は実にひどうございます。市の図書館として、こんなところにあるのにしては国辱ものですね。