轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页
だが、おらあ彰義隊くずれの逆臣だ。また賤しい幇間だ。弟のつらよごしをしてはいけねえと、じっと会いてえのを抑えていたんだ。――いや、俺から足を運ばなくっても、来るだろうと待っていたんだ。俺は、兄だっ、兄だぞっ」
「すみません。ご気色をなおして下さい。改めて、明日、お詫びに出ます」
「来なくってもいい。俺の家は吉原という白粉の街だ。てめえのような聖人君子は、足ぶみするな……もし過って、てめえが、俺のような蹴躓きをしてみやがれ、気の毒だが幇間もできやしねえ!」
ぴしゃっと襖の音が八十三郎の顔へ風を残した。もう露八はそこにいなかったのである。どん、どん、どんと裏梯子の跫音が階下へあらく消える。
「お辰どん、すまないが、ここをちょっと貸しておくんなさい」
女中部屋の次の蒲団部屋へ、露八は、かくれこんだ。そして、窓の障子を開けるのも間にあわないように、首を外へ出した。すぐその下は大川の水だった。二本の指を口へいれて、苦しそうに酒を嘔吐している。いつも、顔へ顔が映ると笑われている彼の頬も、艶気がなく、真っ蒼であった。
三
胸のつかえがさっぱりとすいて、毛穴が寒々とよだって、頭のしんが、しいんと空虚に痛む。