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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

07 一九四〇年(昭和十五年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页

青空文庫

必要はないと思うの。芸術の世界の感覚として、ね。これは同感でいらっしゃるでしょう? 芸術の必然にとってもこれははっきり云えると思います。ですから、この点ではガンばるつもりです。四月に入ったらそろそろほかの仕事をみんなことわります。長篇の稿料を貰うように相談してありますから何とかなるでしょう。六月六日には島田に行かなければなりません、三年ですから。こんどはいろいろな点からごく短くしか行けますまい。それ前に達ちゃんがかえるといいけれども。もし達ちゃんがそれ前にかえっても、私はそのためにかえることは出来にくいと思って居ります。どうお考えでしょう。きっとお母さんはおわかり下さるでしょうね、あなたからもよくおっしゃって下されば。

多賀ちゃん、ひっそりして臥て雑誌よんでいるようです。これから台所へおりて、夕飯たべたら、音羽へゆきます。

こんな風にして動いている私のふところの中には、やはり例の淡紅色の表紙の詩集が入って居ます。枕のそばにあったり、枕の下にあったり、いつの間にかその上で眠って、体の下になっていたり。机の方ではいつも左手のところにおかれます。そして、一寸つかれたときひろげて一行二行よむのですが、詩の面白さは、ほんの小さい情景をかいた短いものが、やはり心の中に入るとひろくひろく瑞々しくひろがるところにあるわけ