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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
07 一九四〇年(昭和十五年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 289,044 字 · 575 页
いろいろの時を経て、詩の具体性、象徴、リズムが段々高いもの、いよいよ複雑であってしかも率直な作品へとうつって、このみが育ってゆくことは面白いことね。そのことについて、きっとあなたも折々はお考えになるのではないでしょうか。少くとも私は随分度々考えます。
四五年前、シャガールの插画のある詩集を私たちは愛読していたことがあったでしょう。あなたがおよみになり、私がよみ、又あなたへおくって、あれもよくよくよまれたものでしたが。今思えば、やはりシャガールの天井から舞いおりる愛の插画がふさわしい程度のものであったと思われます。詩人たちは、自分たちの感覚に若くて、自分のよむ詩の美しさ、その詩のテーマの美しさに我を忘れて、十分に表徴し十分に描き音楽化するところまで行っていませんでした。
それから、何かきわめて微妙な成熟が行われて一巻は一巻へと光彩を深めて行ったおどろき。私ははっきりその一巻から一巻への進歩を思い出せます。ある程度の間が各巻の間におかれて、次に発表されたとき、反誦復唱して私たちは何とその期間にゆたかにされたもののあることを、おどろいて讚歎したことでしょう。